嵐の引継ぎ~陸の孤島

MR

研修を終えたジャラは関東の方に配属が決まった。
関西を出る事も、更に一人暮らしする事も初めてで不安でいっぱいであった。

その日は朝から大雨が降っていた。
台風の影響である。

しかし、警報も出ていなかった為に、営業所のMRは得意先に向かっていた。

私の先輩も、私を引き連れて、引きつぎをするつもりらしい。

しかし、引継ぎって、担当変わる挨拶だけ?
何か、私の事ばっかり、話して、自分の事言わないやん。

この時はこんなもんだと思っていたが、今から考えると、得意先に弱いので、それを隠す為に、私の話をしていたのだろう!

こっちは社会人はじめてやし、営業もしたことがないのに、
『もっと積極的に話しないと!』と先輩

あんたが俺の話するから、話すことないやん。
まして、話すネタもふってくれないし

そんなこんなで、午前中は数軒訪問できた。
しかし、午後から雨足が強くなって行ったのである!

『先輩、この状態ヤバくないですか?』
『こんなん、しょっちゅうやで』

しかし、周りの車をあまり通らなくなってきている。
どんどんと空いてきているのであった。

『ジャラ、そろそろ戻ろうか?』
『お任せします』

普段通らないような道で近道をしようとしていた。
先が下り坂になっていて、クルマが上半分見えていた。
結構、速いスピードでその車に追いつこうとした瞬間!

『やば!あの車、半分沈んでいる』
そう、丁度下り坂と上り坂の窪みとなった道で車が水没していたのであった。

慌ててハンドルを切ってかわそうとしたが、水で見えていなかったのであろう、田んぼに勢いよく突っ込んたのである。

そうなるとタイヤはスタックしてしまい、空回り状態で、動かなくなってしまった。

『俺が押すから、一気にバックで脱出や』と先輩

ドアを開けたら、もう腰ぐらいまで水がきていた。
その瞬間、ジャラは絶望の文字しかなかった。

先輩が押し、バックでアクセルを踏んでもビクともしなかった。
ただ先輩に水がはねでかかるのみであった。

『行くぞー』と先輩

なので、ジャラは行くぞと言う時に口が開く瞬間を狙ってアクセル
先輩の顔や口に水が思いっきり跳ねるのが楽しくて仕方なくなった

『もっとぉー』と先輩
その瞬間にアクセルと先輩はビショビショとなったのであった。
数回、そんなやりとりをやって、諦めたようである。

2人で、車をおり、ジャラのスーツもびしょ濡れとなった。

近くに工事現場の事務所があったので、助けをまとめると、もう、会社まで送ってやると言われ、車は乗り捨てるしかない状態であった。

この地域は橋に囲まれた土地だったので陸の孤島となっていた。

工事現場の人の好意で作業着を貸してもらい、それに着替えて、営業所まで送ってもらった。

営業所では、帰社命令が出てたようで、先輩は凄く怒られていた。

こうしてジャラの1日目の引き続きは終わったのである。
営業所の皆さんはジャラが辞めると感じてたらしい

それにしても、せんの顔に水をかけてやったのが、唯一の楽しみやったわ!

次の日、営業車を取りにいった先輩が見たものは、車の中で水に浮いていたジャラの営業バックだった。

当然、車はマフラーから水が入り、故障
2日目の引き続きはなくなったのである!

タイトルとURLをコピーしました